相場が不安定になるとニュースでよく耳にするVIX指数ですが、これを対象にした金融商品への投資には大きなリスクが伴うことをご存知でしょうか。VIXへの投資が危険だと言われる理由や仕組みについて詳しく知りたいという方も多いはずです。実はVIX関連のETFやETNは、長期で持っているだけで資産が減っていく特殊な構造をしており、過去には一夜にして価値がほぼゼロになるような大暴落も起きています。1552などの銘柄を買う前に、その危険性やおすすめしない理由をしっかり理解しておくことが大切です。

- VIX指数そのものには直接投資できず先物市場の影響を強く受けること
- コンタンゴという仕組みにより長期保有で資産が目減りするリスク
- 過去に起きたVIXショックなどの具体的な暴落事例と教訓
- なぜ初心者が安易に手を出すべきではないのかという根本的な理由
VIXへの投資が危険な根本的理由
ここでは、なぜVIXに関連する金融商品への投資がこれほどまでに危険視されているのか、その構造的な要因について掘り下げていきます。単に「値動きが激しいから」という理由だけでなく、商品設計そのものに含まれている「減価」の仕組みや、個人投資家が陥りやすい誤解について、順を追って見ていきましょう。
恐怖指数VIXの仕組みと誤解
まず最初に押さえておきたいのが、VIX指数(Volatility Index)とは一体何なのかということです。一般的には「恐怖指数」と呼ばれ、S&P500指数のオプション取引の価格をもとに算出されます。市場参加者が今後30日間でどれくらい相場が変動すると予想しているかを表す数値ですね。
多くの人が誤解しているのが、「VIX指数そのもの」を買えると思っている点です。S&P500や日経平均であれば、現物株のバスケットを買えば指数と同じ動きを手に入れられますが、VIXはあくまで「ボラティリティ(変動率)」という概念を数値化したものに過ぎません。つまり、現物資産が存在しないため、指数そのものを直接購入することは不可能なんです。
VIX投資の実態
私たちが「VIXを買う」という場合、実際にはVIX指数の将来の価格を予想して売買する「VIX先物」を組み入れたETFやETNを購入していることになります。
この「指数」と「先物」の違いが、後述する様々なリスクの温床になっています。「株価が下がればVIXが上がるからヘッジになる」という単純な図式で捉えていると、思わぬ落とし穴にハマってしまうかもしれません。
長期保有で資産が減価する仕組み
VIX投資が危険だと言われる最大の理由は、保有しているだけで資産が勝手に減っていく「減価(げんか)」という現象にあります。これは先物市場の「コンタンゴ(順ざや)」という状態が関係しています。
通常、VIX先物市場では、満期が遠い先物の方が価格が高くなる傾向があります。ETFの運用会社は、満期が近づいた安い先物を売って、満期が遠い高い先物を買い直す「ロールオーバー」という作業を日々行わなければなりません。
ロールオーバーによる損失のサイクル
- 安い期近先物を売る
- 高い期先先物を買う
- 同じ金額でも保有できる枚数が減る
これを繰り返すことで、VIX指数自体が全く動かなくても、基準価額は毎日少しずつ下落していきます。まるで穴の開いたバケツで水を運んでいるようなもので、長期保有すればするほど、確実に資産が削られていく構造になっているんです。
1552などETF商品の構造的リスク
日本の投資家にとって馴染み深いのが、東京証券取引所に上場している「1552(国際のETF VIX短期先物指数)」などのETF商品かと思います。手軽に円建てで取引できるため人気がありますが、これにも特有の構造的リスクがあります。
まず、先ほど説明したコンタンゴによる減価の影響をモロに受けます。さらに、1552は円建てですが為替ヘッジが行われていないケースが一般的です。通常、世界的な株安(リスクオフ)が起きるとVIXは上昇しますが、同時に「安全資産としての円」が買われて円高になることが多いですよね。
| 市場の動き | 1552への影響 |
|---|---|
| VIX先物の上昇 | 価格上昇要因(プラス) |
| 円高の進行 | 価格下落要因(マイナス) |
このように、VIXの上昇分が円高によって相殺されてしまい、思ったほど利益が出ないということが頻繁に起こります。ヘッジ目的で買ったのに、肝心な時に役立たない可能性があるというのは、知っておくべき重要なポイントかなと思います。
VIX投資をおすすめしない理由
結論として、一般的な個人投資家の方にはVIX投資はあまりおすすめできません。理由はシンプルで、「勝つ確率が構造的に低いゲーム」だからです。
短期的にはVIXが急騰して利益が出る局面もありますが、それを正確にタイミングよく捉えるのはプロでも至難の業です。平常時はコンタンゴによる減価で資産が減り続け、いざ暴落が起きてもタイミングを逃せばすぐに元の水準に戻ってしまいます。
ここが危険!
VIXは株価のように右肩上がりを期待できる資産ではありません。基本的には下落し続ける(減価し続ける)性質を持つため、長期的な資産形成には全く不向きです。
「宝くじ的な感覚で少しだけ」というなら止めはしませんが、大切な退職金や生活防衛資金を投じるような対象ではない、ということは強くお伝えしたいですね。
初心者が大損する典型パターン
VIX投資で初心者が陥りやすい失敗パターンには、ある程度の共通点があります。よくあるのが、「VIXが歴史的な低水準(例えば10〜12)にあるから、そろそろ上がるだろう」と考えて買い向かうケースです。
しかし、相場が平穏な時期は意外と長く続くものです。その間、ずっとコンタンゴによる減価が発生し続けるため、VIX指数そのものは横ばいでも、保有しているETFの価格はズルズルと下がり続けます。そして、ようやく相場が荒れてVIXが上がった時には、すでに元本が大きく目減りしていて、トータルではマイナス…なんてことが珍しくありません。
また、VIXが急騰した後に「もう下がるだろう」と安易にインバース型(VIXが下がると利益が出る商品)に手を出し、その後の二番底、三番底のパニック相場で焼かれるというのも、悲しいですがよくある話です。
VIXへの投資は危険という現実の事例

理論的なリスクだけでなく、実際に過去の市場で何が起きたのかを知ることは非常に重要です。ここでは、多くの投資家が資産を失った「VIXショック」などの事例を振り返りながら、VIX投資の恐ろしさを再確認していきましょう。
2018年VIXショックの全貌
「VIX 投資 危険」という言葉の重みを決定づけたのが、2018年2月5日に発生した「VIXショック(別名:Volmageddon)」です。この日、米国市場の引け後にVIX先物が異常なほどの急騰を見せました。
当時、市場は非常に安定しており、「VIXをショート(空売り)する」戦略が大流行していました。VIXは下がっていく性質があるため、それを売っていれば簡単に儲かると信じられていたんです。しかし、その慢心が仇となりました。
たった一夜にしてVIX先物が倍以上の価格に跳ね上がり、ショート戦略をとっていた投資家の資産が一瞬にして吹き飛びました。何年もかけて積み上げてきた利益が、わずか数時間の出来事で全て消え失せたのです。これは金融史に残る悲劇として、今も語り継がれています。
ETNの早期償還とインバースの罠
VIXショックで特に注目されたのが、ETN(上場投資証券)という商品の仕組みそのものが持つリスクです。当時人気だった「XIV」というインバース型ETNは、1日で価値が約96%も下落しました。
ここで発動したのが「早期償還条項(アクセラレーション・イベント)」というルールです。これは、商品の価値が一定以上(例えば80%以上)下落した場合、運用会社が強制的にその商品を償還(終了)させてしまうというものです。
強制ロスカットの恐怖
株なら「塩漬けにして待てば戻るかも」という希望がありますが、ETNで早期償還が発動すると、その時点の暴落した価格で強制的に現金化され、ゲームオーバーとなります。
投資家に戻ってきたのは、暴落後のごくわずかな金額だけ。100万円投資していたものが、朝起きたら数万円になって戻ってきた、というレベルの話が現実に起きたわけです。ETNには発行体の信用リスクも含め、ETFとは違った怖さがあることを理解しておかなければなりません。
CFD取引のレバレッジ規制リスク
ETFやETNだけでなく、CFD(差金決済取引)を使ってVIXを取引している方もいるかもしれません。CFDはレバレッジをかけられるのが魅力ですが、相場急変時にはこれが凶器となります。
VIXが急騰するようなパニック相場では、証券会社が証拠金維持率を引き上げたり、スプレッド(売値と買値の差)を極端に広げたりすることがあります。2020年のコロナショックの時もそうでした。
普段なら耐えられる値動きでも、レバレッジがかかっている状態で証拠金率が引き上げられると、追証(おいしょう)が発生したり、意図しないタイミングで強制ロスカットされたりします。自分のコントロール外の要因で損失が確定してしまうリスクは、VIXのようなボラティリティの高い商品では特に顕著です。
チャートで読めない暴騰の恐怖
VIXの動きは、一般的な株や為替のテクニカル分析が通用しないことが多いのも特徴です。「上がりすぎだから下がる」「下がりすぎだから上がる」といったオシレーター系の指標は、パニック時には完全に無視されます。
VIXは理論上の上限がありません。平常時の15から30に上がったからといって「高い」とは限らず、そこから50、80へと一気に突き抜ける爆発力を持っています。人間の心理的バイアスとして「平均への回帰」を期待してしまいますが、VIXのスパイク(急騰)は、そんな期待をあざ笑うかのように投資家を焼き尽くすことがあります。
チャートを見て「そろそろ天井かな」と逆張りを仕掛けた瞬間、さらなる悪材料が出て梯子を外される。そんな理不尽とも言える動きをするのがVIX市場なんです。
VIXへの投資は危険なため控える

ここまで見てきた通り、VIX関連商品への投資は構造的な減価リスク、商品設計上の強制償還リスク、そして予測不能な市場変動リスクなど、個人投資家が許容できる範囲を超えた危険性を孕んでいます。
もちろん、プロのトレーダーが短期的なヘッジとして利用する分には有用なツールかもしれません。しかし、長期的な資産形成を目指す私たち一般投資家にとっては、「触らぬ神に祟りなし」というのが正直なところかなと思います。
VIX指数は、投資対象として売買するものではなく、あくまで「相場の危険度を測るメーター」として眺めるくらいがちょうど良いのかもしれませんね。大切なお金を、よく分からない複雑な仕組みの商品で溶かしてしまわないよう、くれぐれも慎重な判断を心がけてください。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資にはリスクが伴いますので、最終的な判断はご自身の責任において行い、必要に応じて専門家にご相談ください。

